○桶川市男女共同参画推進条例
平成14年3月28日
条例第13号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第9条)
第2章 基本的施策(第10条―第20条)
第3章 具体的施策(第21条)
第4章 男女不平等苦情処理委員(第22条―第25条)
第5章 桶川市男女共同参画審議会(第26条―第33条)
第6章 補則(第34条)
附則
我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、男女平等の実現については、昭和50年の国際婦人年以来、国際連合が「平等・開発・平和」の目標を掲げ、各国が連帯して様々な取組がされてきた。とりわけ、昭和54年の「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の採択以後、国内及び県内においても男女平等のための法整備が進められてきた。
しかし、性別による固定的な役割分担意識やそれに基づく社会制度及び慣行は依然として根強く残っており、社会の様々な分野での男女間の格差がみられ、真の男女平等の達成には多くの課題が残されている。
我が桶川市においても、女性の労働環境が必ずしも充分ではなく、出産又は子育て期に仕事を断念する状況がみられる。家庭内、とりわけ、多世代同居の家庭においては、家事その他の活動や意思決定の際に、必ずしも男女が対等でない傾向も多くみられる。
新たな千年紀を迎えた今、私たちは、「平等・開発・平和」が最も求められており、戦争をはじめとしたあらゆる暴力の解消なしには、男女平等はありえないという共通の認識を持つべきである。社会問題化しているドメスティック・バイオレンスをはじめとするあらゆる暴力の解消と世界の平和を実現するためにも、男女が互いの人権を尊重しつつ、社会の対等な構成員として、自らの意思によって、社会のあらゆる分野における活動に参画できる男女共同参画社会の形成を進めることが重要である。
桶川市は、平成10年12月に、自立と平等を基本理念とし、男女共同参画都市宣言をした。私たちは、この宣言を実効性あるものにし、日常生活において実質的な男女平等を実現し、個性豊かに生き生きと暮らせる地域社会の早期実現を目指すことを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関し、基本理念及び目指すべき姿を定め、並びに市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、施策の基本的な事項を定めることにより、施策を総合的かつ計画的に推進し、自立と平等を基調とした男女共同参画社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 男女共同参画 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことをいう。
(2) 積極的格差是正措置 前号に規定する機会に係る男女間の格差を是正するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。
(3) 事業者 市内に事務所又は事業所を有する営利を目的とした法人又は個人若しくは営利を目的としない団体をいう。
(4) ジェンダー 生物学的又は生理学的な性別と異なり、男女の役割を固定的にとらえる社会的又は文化的に培われ形成されてきた性別をいう。
(5) セクシュアル・ハラスメント 性的な言動に対する相手方の対応によって不利益を与え、又は性的な言動により相手方の生活環境を害することをいう。
(6) ドメスティック・バイオレンス 配偶者等から受ける身体的、精神的、経済的又は言語的な暴力及び虐待をいう。
(7) 性と生殖に関する健康と権利 身体に妊娠、出産等の仕組みを有する女性が、身体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態にあること並びに妊娠、出産等の自己決定の権利をいう。
(基本理念)
第3条 男女共同参画の推進は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が直接的であるか間接的であるかを問わず性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。
2 男女共同参画の推進に当たっては、性別による固定的な役割分担等に基づく社会における制度又は慣行が、様々な場面で男女双方の生き方及び男女の社会における活動の自由な選択を制約していることに配慮し、男女共同参画の視点に立って社会制度及び慣行を見直すとともに、意識の改革を行わなければならない。
3 男女共同参画の推進は、男女が、社会の対等な構成員として、市における政策又は事業者における方針の立案及び決定に、共同して参画する機会が確保されることを旨として、行われなければならない。
4 男女共同参画の推進は、家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援の下に、家事、子育て、家族の介護その他の家庭生活における活動及び社会生活における活動に対等に参画することができるようにすることを旨として、行われなければならない。
5 男女共同参画の推進は、男女の対等な関係の下に、生涯にわたる性と生殖に関する健康と権利が尊重されることを旨として、行われなければならない。
6 男女共同参画の推進は、国際社会における取組が我が国の男女共同参画の施策を促してきた経緯にかんがみ、国際的な理解及び協力の下に行われなければならない。
7 男女共同参画の推進は、これまで私的領域の問題とされてきたドメスティック・バイオレンスが社会構造的なものであり、その根絶のためには社会的取組が必要であるとの認識の下に、女性に対するあらゆる暴力が根絶されることを旨として、行われなければならない。
(目指すべき姿)
第4条 市、市民及び事業者は、男女共同参画社会の実現に当たり、次に掲げる事項を目指すべき姿として、この達成に努めるものとする。
(1) 家庭において目指すべき姿
ア ジェンダーにとらわれることなく、男女が、自分の意思で多様な生き方を選択し、それらをお互いに認め合い、家事、子育て及び介護を担い合う家庭
イ ドメスティック・バイオレンスのない安全で平和な家庭
ウ 性と生殖に関する健康と権利の確立によって、女性の基本的な人権が保障される家庭
エ 経済的な事柄を含む重要な事柄についての意思決定に、男女が対等に参画し、決定する家庭
(2) 地域において目指すべき姿
ア 男女が、対等に地域の諸活動において、企画立案と決定に参画し、ジェンダーにとらわれない地域
イ 女性が積極的に参画し、リーダーシップが発揮できる地域
ウ 男女が、男女共同参画社会について学習し、セクシュアル・ハラスメント及びドメスティック・バイオレンスの根絶に取り組む地域
(3) 職場において目指すべき姿
ア 採用、賃金、昇進、教育、配置等に関して、直接的であるか間接的であるかを問わず性別による差別及び格差がなくなり、個人の能力と個性が発揮される職場
イ セクシュアル・ハラスメントがなくなり、男女それぞれの人格を認め合って安心して働ける職場
ウ 長時間労働又はストレスのない環境を実現し、ゆとりと活力のある家庭生活が保障され、地域活動等に参加しやすい職場
エ 男女が等しく、育児又は介護のために時間及び休業を取得でき、仕事と家庭が両立できる職場
オ 性と生殖に関する健康と権利が尊重される職場
カ 管理職の男女比が均衡し、企画立案及び決定においても男女の対等な参画が進む職場
(4) 行政において目指すべき姿
ア あらゆる行政施策にジェンダーの視点からの点検が行われ、積極的格差是正措置への取組を促す施策が行われる行政
イ 附属機関等の女性委員又は男性委員の占める割合が均衡する行政
(5) 学校において目指すべき姿
ア 男女平等が促進されるよう、児童、生徒及び教職員がジェンダーにとらわれることなく、それぞれの個性及び人権を大切にする学校
イ セクシュアル・ハラスメント及びドメスティック・バイオレンスの根絶のための学習が男女の区別なく進められている学校
ウ ジェンダーにとらわれることなく、校内での諸活動の役割分担が行われ、進学、就職等において、子どもの権利を尊重し、個人の能力や適性を考慮した選択が行われる学校
2 市は、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策をも視野に入れて、幅広い施策を対象に必要な措置を講じなければならない。
(市民の責務)
第6条 市民は、基本理念にのっとり、家庭、地域、職場、学校その他の社会のあらゆる分野に、自ら積極的に参画するとともに、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するように努めなければならない。
(事業者の責務)
第7条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、男女が共同して参画することができる体制の整備と環境づくりに積極的に取り組むとともに、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に協力するように努めなければならない。
2 事業者は、第4章に規定する男女不平等苦情処理委員による助言、是正の要望等がなされた場合には、速やかにこれを受け入れるように努めなければならない。
(性別による権利侵害の禁止)
第8条 何人も、いかなる場所においても、性別による差別的取扱いを行ってはならない。
2 何人も、いかなる場所においても、セクシュアル・ハラスメントを行ってはならない。
3 何人も、いかなる場所においても、ドメスティック・バイオレンスを行ってはならない。
(公衆に表示する情報に関する留意)
第9条 何人も、公衆に表示する情報において、性別による固定的な役割分担及び女性に対する暴力等を助長し、及び連想させる表現並びに過度の性的な表現を行わないように努めなければならない。
第2章 基本的施策
(基本計画の策定)
第10条 市長は、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、男女共同参画の推進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。
2 市長は、基本計画の策定に当たっては、第5章に規定する桶川市男女共同参画審議会に諮問し、市民及び事業者の意見が反映されるように努めるものとする。
3 市長は、基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表するものとする。
4 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
(年次報告)
第11条 市長は、毎年、男女共同参画の推進状況及び男女共同参画の推進に関する施策の実施状況を明らかにする報告書を作成し、及び公表するものとする。
(法制上の措置等)
第12条 市は、男女共同参画社会の実現に関する施策を推進するため、必要な法制上及び財政上の措置を講ずるように努めるものとする。
(推進体制の整備)
第13条 市は、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の実現を総合的かつ計画的に推進するため、政策全般を専ら統括し、総合調整機能を持つ体制を整備するものとする。
(総合的な拠点施設の設置)
第14条 市は、男女共同参画社会の実現に向けた施策を実施し、及び市民による男女共同参画の取組を支援するための総合的な拠点施設を設置するものとする。
(市における積極的格差是正措置)
第15条 市は、男女共同参画の推進のため、人事管理、組織運営及び政策決定の機会において、積極的格差是正措置を講じ、率先して男女共同参画の実現に努めるものとする。
2 市は、男女共同参画の推進のため、附属機関等の委員の任命又は委嘱に当たり、積極的格差是正措置を講じ、男女いずれか一方の委員の数は、委員総数の10分の4未満とならないように努めなければならない。
(施策の策定等に当たっての配慮)
第16条 市は、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画社会の形成に配慮しなければならない。
(調査研究)
第17条 市は、男女共同参画の推進に関する施策の策定に必要な事項及び男女共同参画の推進を阻害する問題についての調査研究を行うものとする。
(連携体制)
第18条 市は、男女共同参画の推進に当たり、国及び他の地方公共団体と連携して取り組むものとする。
(事業者への支援)
第19条 市は、事業者(営利を目的とした法人又は個人を除く。)が行う男女共同参画の推進に関する活動に資するため、情報及び活動の場の提供、財政上の支援その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(国際会議の成果の反映)
第20条 市は、男女共同参画社会の形成の促進が国際社会における取組と密接な関係を有していることに配慮し、国際会議の成果を市の施策に生かすように努めるものとする。
第3章 具体的施策
(具体的施策)
第21条 市は、基本理念にのっとり、男女共同参画を推進するため、次に掲げる施策等を行うものとする。
(1) 広報活動等の充実により、男女共同参画に関する市民及び事業者の理解を深めるとともに、学校教育をはじめとするあらゆる分野の教育において、男女共同参画を促進するための措置を講ずるように努めること。
(2) 雇用の分野において、男女共同参画の取組を普及させるため、事業者に対し、適切な指導を行うとともに、男女共同参画の取組を積極的に行っている事業者の表彰等を行うこと。
(3) 起業及び自営業における女性の能力開発に必要な支援を行うこと。
(4) 男女が共に家庭生活及び職業生活を両立することができるように、その支援を行うこと。
(5) 性と生殖に関する健康と権利を守るため、情報の提供、啓発及び学習機会の充実を図ること。
(6) ドメスティック・バイオレンス及びセクシュアル・ハラスメントの根絶に努めるとともに、これらの被害を受けた者に対し、必要に応じた支援及び救済を行うこと。
第4章 男女不平等苦情処理委員
(苦情の処理)
第22条 市長は、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策若しくは男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる施策についての苦情又は男女共同参画の推進を阻害する要因によって人権が侵害された場合の事案について、市内に住所を有する者又は在勤若しくは在学する者(次項において「市民等」という。)からの申出を適切かつ迅速に処理するため、男女不平等苦情処理委員(以下「苦情処理委員」という。)を置く。
2 市民等は、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策若しくは男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる施策について苦情がある場合、又は男女共同参画の推進を阻害する要因によって人権を侵害された場合には、苦情処理委員に申し出ることができる。
(職務)
第23条 苦情処理委員の職務は、次のとおりとする。
(2) 前号の調査を行う場合、必要があると認めるときは、当該機関に出席を求め、事情を聴くこと。
(3) 前2号の調査の結果、必要があると認めるときは、当該機関に是正その他の措置をとるよう勧告等を行うこと。
(4) 前号の勧告等が行われた場合において、当該機関に改善がみられない場合、事情を聴取した上で、正当な理由がないと認められるときは、その旨を公表すること。
(5) 前条第2項の規定に基づき人権を侵害された旨の申出があった場合において、関係者に対し、その協力を得た上で資料の提出及び説明を求め、必要に応じて、出席を求めて事情を聴き、必要があると認めるときは、当該関係者に助言、是正の要望等を行うこと。
(定数等)
第24条 苦情処理委員の定数は、2人とし、人格が高潔で、男女共同参画の推進に関し優れた識見を有する者のうちから、市長が委嘱する。この場合において、1人は、女性としなければならない。
2 苦情処理委員は、地方公共団体の議会の議員若しくは長又は政党その他の政治的団体の役員と兼ねることができない。
3 苦情処理委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。
4 補欠の苦情処理委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 市長は、苦情処理委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき、又は苦情処理委員に職務上の義務違反その他苦情処理委員たるに適しない非行があると認めるときは、これを解嘱することができる。
6 市長は、苦情処理委員がその職務遂行上に必要があると認めた場合、苦情処理委員の職務を補助する者を置くことができる。
(責務)
第25条 苦情処理委員及び補助する者は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
第5章 桶川市男女共同参画審議会
(設置)
第26条 市長は、男女共同参画を推進するため、桶川市男女共同参画審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第27条 審議会は、次に掲げる事務を行う。
(1) 市長の諮問に応じ、男女共同参画の推進に関する基本的かつ総合的な施策及び重要事項を調査審議すること。
(2) 男女共同参画の推進に関する施策の実施状況について、必要に応じ、調査し、及び市長に意見を述べること。
(組織)
第28条 審議会は、委員12人以内で組織する。
2 女性委員の数は、当分の間、委員の総数の3分の2以上とする。
3 委員は、知識経験者、関係団体の代表者及び市民のうちから市長が委嘱する。この場合において、市長は、委員の一部を公募により選出するように努めるものとする。
(平成17条例10・一部改正)
(委員)
第29条 委員の任期は、2年とする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長及び副会長)
第30条 審議会に会長及び副会長を置き、委員の互選により定める。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。
(会議)
第31条 審議会の会議は、会長が招集し、その議長となる。
2 審議会の会議は、委員の過半数以上の出席がなければ開くことができない。
(意見聴取等)
第32条 審議会は、必要があると認めるときは、関係者の出席を求めて、意見若しくは説明を聴き、又は必要な資料の提出を求めることができる。
(庶務)
第33条 審議会の庶務は、企画財政部人権・男女共同参画課において処理する。
(平成15条例23・平成21条例21・平成25条例36・一部改正)
第6章 補則
(委任)
第34条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
(桶川市女性政策協議会条例の廃止)
2 桶川市女性政策協議会条例(平成10年桶川市条例第1号)は、廃止する。
附則(平成15年条例第23号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成15年10月1日から施行する。
附則(平成17年条例第10号)抄
この条例は、平成17年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる改正は、当該各号に定める日から施行する。
(1)から(7)まで 略
(8) 第12条の改正 平成18年6月1日
附則(平成21年条例第21号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成22年4月1日から施行する。
附則(平成25年条例第36号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成26年4月1日から施行する。